街はトワイライ

CD屋トマト先輩の日々

2010年代の9枚

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Nils Frahm 『All Melody』 (2018)

あがた森魚 『浦島64』 (2014)

My Bloody Valentine 『mbv』 (2013)

『The Moomins』 (2016)

ペガサス 『呪われた世界』 (2012)

豊田道倫 『mtv』 (2013)

蓜島邦明 『九龍風水傳原聲音樂專輯』 (2014)

Emerald Four 『I Want To Be A Saint』 (2016)

佐野千明 『屋上の終集合曲集』 (2013)

some memos about BLADE RUNNER


ブレードランナーの今も深まる魅力の要因は続編が(すぐには)出なかったことが大きいかもしれない。あの終わり方なら2、3、とすぐいきそうなものだが。たぶん当時はそんなにヒットしなかったこと、困難の連続で製作陣が精根尽き果てたことが原因。ビデオが普及してからじわじわファン拡大のカルト映画

 

15分置きに敵にぶっ飛ばされ続けるあんなヒーロー他にいるか!?ってファンの興奮も笑えるがだから面白いし、やっぱデッカードは人間じゃないと意味ないよなあ。

 

発掘されたワークプリント版の試写中、居眠りをしていたリドリースコット、見終わると、そうそうユニコーンのシーンがあったんだ!と言い出し、いや無いよそんなシーンという回りに構わず(実際無い)、デッカードはレプリだ展開に一直線→ディレクターズカットの流れ。だったはず。いちいち逸話が面白い。

 

ディレクターズカット、ファイナルカットとリドリースコットが「デッカードはレプリ」と言ってるのはほんわかどころかもう明らかなんだけど、いやいやそれは最初の話と違うし、その設定じゃ感情移入できなくて面白くないよ!という多数のレジスタンスたちが(先頭にはハリソンフォード)が今も地下で。

 

ユニコーン
「性格は高邁で、孤高を保ち、人間たちを嫌って普段は森の奥に潜んでいます。
ただ、処女に対してだけは心を許すと言われていて、無垢な乙女がユニコーンとくつろぐ姿は、しばしば絵画のモチーフにもなっています。」

ユニコーンUnicorn: 怪物森羅万象

 

それが処女・純粋・無垢を現す幻想の生物ということなら、デッカードのみる夢のユニコーンシーンが無くても、ラストのガフが置いていく折り紙のつじつまが合う。つまり、個人的にはファイナルカットから、ユニコーンの夢シーンを覗いたものがパーフェクトなバージョン。

 

 

BLADE RUNNER MAIN TITLES

 こんなところでかなり基礎となるべき「MAIN TITLES」って一体何ぞや問題が勃発。かなり統一されてきつつある楽曲名の中でも意外にまだ混乱している様子があるので、私的見解。そもそもヴァンゲリス本人に聞かないと、いや聞いても真実はわからないのかもしれないが。

 ・「PROLOGUE」

 ・「MAIN TITLES」

 ・「LOS ANGELES NOVEMBER, 2019」

この3曲は別であると考える。初出典は『OFFWORLD盤(1993)』だと思われる「LOS ANGELES NOVEMBER, 2019」というタイトルの曲の存在がさらにこの問題をややこしくしている原因。

 

 映画に沿って説明すると、はじまりは「LADD COMPANY LOGO」→タイトルとキャスト、レプリカント解説の「PROLOGUE」→ドラが鳴り映像がスタートする「MAIN TITLES」ここまでの流れ。その後にリオンの検査のシーンへ。デッカード登場→ホワイトドラゴンでふたつで充分→ガフ登場し連行、この後スピナーでロサンゼルス市警へ向かうシーンの音楽が「LOS ANGELES NOVEMBER, 2019」である。はずだ。※この曲は「SPINNER ASCENT」と表記されることもある。

 

 さらにこの後、またデッカードとガフがスピナーに乗ってタイレル社に向かうシーンの曲は「MAIN TITLES」の別バージョン(半音高いらしい)。

 

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LADD COMPANY LOGO

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PROLOGUE

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MAIN TITLES

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SPINNER ASCENT (LOS ANGELES NOVEMBER, 2019)

 つまり。オープニングのバーンと"LOS ANGELES NOVEMBER, 2019"の文字が出るシーンの音楽は、「LOS ANGELES NOVEMBER, 2019」と呼ばれるではなく、 それが「MAIN TITLES」という曲である。という見解。なぜこの曲をそう呼び始めたのかわからないが、「SPINNER ASCENT」とする方が適切である。

OFF WORLD盤 (1993)に記載されてるサントラが出ない理由。

OFF WORLD盤 (1993)に記載されてるサントラが出ない理由。

The cover booklet that comes with this CD has several pages of text and photographs concerning the film and soundtrack. It states in the booklet that the original soundtrack was unreleased because of a conflict between Ridley Scott and Vangelis over non-Vangelis composed source material.

 このCDに付属している表紙の小冊子には、映画とサウンドトラックに関するテキストと写真が数ページあります。 小冊子には、リドリー・スコットヴァンゲリスヴァンゲリス以外の作曲ソース素材をめぐって対立するため、オリジナルのサウンドトラックがリリースされていないと記載されています

BladeZone: The Online Blade Runner Fan Club

 

 ここに書かれている内容はニューアメリカンオーケストラ盤のライナーに書かれたふたつとはまた違う理由なので、いろいろ考察できて面白い。「ヴァンゲリス以外の使用楽曲」つまりは「Ogi No Mato」なり「Pompeii 76 A.D.(aka Bicycle Rider)」などを指しているのだと思われるが、ヴァンゲリスが「If I Did't Care」の代わりにとてもよく似た、でも全く違う秀曲「ONE MORE KISS, DEAR」を作りあげたことを考えると、ブレードランナーの世界に他人の曲を入れられるなんてかなり屈辱的だっただろうことは想像できる。