街はトワイライ

CD屋トマト先輩の日々

寄席はるあき

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安藤鶴夫 / 金子桂三 『寄席はるあき』 1968-2006

 季節と景色がある。

 まだ新作に興味が無いのは、落語に求めてるのが、なにかしら大きな意味で「懐かしさ」というところが大きいからかもしれない。笑いたいから聞いているわけではない。話芸であるし、しかもひとりで座って、何も使わずにやってしまう落語というものは、存分にこちらのイメージを膨らませてくれる。同じ話を聞いていても、聞いてる人の中で浮かんでいる映像はみんな違うのだろうし、言えばそこが魅力だ。そのイメージというのはやはり、なつかしさ、こどもの頃、原風景というもののつながっていくのかもしれない。それぞれの持つ。

 輪をかけてこの本では著者が子どもの頃、婆ァやに連れられて毎日のように通っていた寄席の思い出、あの頃の風景が書かれていて、その「懐かしい」イメージは正に落語を聞いているようにぽーっとこちらの頭の中も照らす。コラム的に短い文でさらっとした読み物であったけど、とても気持ちがよくなる文章だった。

 そして写真が多くて、それがまたとてもいい!昭和30年代の寄席の風景。