街はトワイライ

CD屋トマト先輩の日々

THURSDAY AFTERNOON 012

#Thursday Afternoon

012

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SPK

Zamia Lehmanni

1986

⭐⭐⭐⭐

 

異国の、煙る路地に迷い込んだ・・・

初期インダストリアル権化グループ4枚目にして黄昏期。はるか昔、東西あらゆる文化が交差したビザンツ帝国、その雑踏の記憶を異国のフィールドレコーディングを多用したゴシック・アンビエント様式で紡いだ異色作。

 自作の帯に書いた上記の文が、このアルバムをうまく説明しているのでそのまま転載。合わせて『生き残った帝国ビザンティン』という本も購入したがいつも眠くなってしまいまだ読み終えていない。

 このダークアンビエント/ゴシックアンビエントと言えよう、全体に靄がかったような、記憶の回廊を彷徨っているような雰囲気はかなり好みであり、世界各国で録音してきたという多民族なフィールドレコーディングがかなり効いている。クーロンズゲートの音楽の元ネタはこの作品なんじゃ無いか?ともよく感じる。

 しかしこのアルバムの前作『Machine Age Voodoo (1984)』との作風のあまりの違いに驚くが、あの訳の分からない唐突なポップミュージックは、このアルバムを作るための資金集めだったのではないかと勘繰る。というのも当時を振り返る本人のライナーに、このアルバムを作るために必要だった高価なサンプラー「フェアライトCMI」が30,000ドルもした。と書かれているのだ。

 写真は2019年のリマスター再発盤。ジャケのデザインが多少違うのとあわせて、ラストに本来は入っていないボーナストラックあり(1992年初CD化の時にもすでに収録)。流れに違和感のない+αなのでこの場合OK。