街はトワイライ

CD屋トマト先輩の日々

THURSDAY AFTERNOON 011

#Thursday Afternoon

011

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Phew
Jamming

2016

⭐⭐⭐

 

 Phewの中でも一番聞いているのは、なぜかしらこのシンセアルバムかもしれない。アルバム『A NEW WORLD』に驚いた後にリリースされた作品で、確か当初はプライベート盤的位置づけ、ライブ会場と自分の利用した直通販でしか販売されていなかったような覚えだ。その後何度か形を変えて正式にリリースされているので、特徴的なあのPhewの歌がほぼ入ってないにもかかわらず、やっぱりこの作品を好む人はPhew本人を含め少なくないのじゃないだろうか。

 29分と27分の長尺のシンセサイザーミュージック。これをアンビエントと呼ぶのは難しいのかもしれない。Throbbing Gristleの音楽をそう呼べないのと同じく、わけなくてもいいけど、分けるのならインダストリアルだろうか。その違いは緊迫感か。緊迫感のある音楽を「=ヒリヒリする音楽」とも呼んでいるが、絶滅危惧のヒリヒリした音楽を現代にもずっと鳴らし続けている稀なアーティストがPhewだと思う。なぜ緊迫した音楽(加えるなら不気味な音楽も)は消えてしまったのだろうか。好きな80年代の音楽はみんなヒリヒリしててカッコいい。

 重なり自体はシンプルではあるが、複雑な展開を聞かせるドローンの世界。約一時間の旅の中でいろいろなシンセサイザーの色や形が現れては次のものに受け継がれていくのを繰り返していく。なので空の雲を見ているというよりはもっとグネグネした海の中の感じだろうか。得体の知れないメタリックな何かも時に現れて遠ざかってゆく。2つの曲名「Cheers」「Encore」は何を意味するのだろうよく分からないがまたずっと聞いている。

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