概念でなく(つまりサティではなく)音的な「アンビエント※」はどこから始まるのだろうということを考えているが、端的には見落としていたヴァンゲリスの1973年『動物の黙示録』の音(特に後半2曲)がかなりアンビエント※で、驚いている。
ドイツ勢クラスターもクラウスシュルツェも71、72年に始まっているが音的にはヴァンゲリスのソレがずっとアンビエント※である。なんなら1973年のイーノとフリップの1stよりもよりアンビエント※である。
某アンビエントの本にはヴァンゲリスがほぼスルーされてて不思議に思ったがこの『動物の黙示録(L’apocalypse des animaux)』は聞いたのだろうか?サントラは省くというルールがあるのかも知れない。サントラを遡ればもっとアンビエント※がありそうな気もする。
ここでの音的アンビエント※とは、ブライアンイーノ1978年『Ambient 1 : Music for Airports』とする。
上記が昨日twitterに書いたものだが、ソロより前のドイツ勢、タンジェリンドリーム初期はやっぱり早い段階でのアンビエントかなと考えている。ということを追記しつつ。
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アンビエントの起源はやっぱりジョンケージだとか、大野松雄だとか書かれていても、それこそ概念はそうであろうけど、音で聴くとやっぱり違う感じがする。基本的にはリラックスできて怖くないというのはアンビエントミュージックには(イーノ的アンビエントミュージックというべきか)大きい要因ではないだろうか?(=現代音楽との違い)
そういう意味でも見落としていたヴァンゲリスの『動物の黙示録』はとてもアンビエントな音であったことにとても興奮気味なわけである。リリースこそ1973年であるが、フランスのTVドキュメンタリーのサントラなので、その放送は1971年とも1972年ともあり、かなり早い時期で録音されたアンビエントである。
特にレコードではB面の2曲は、Krankyレーベルからでも出ていそうなかなりのドローンアンビエントで、1973年にしてこの音はかなりすごいのではないだろうか。その内容も「世界の創造」と「海への回帰」と怖くないし、10分にも及ぶ「世界の創造」はイエスのライブ開始のSEとして大音量で流されたとの逸話が出てくる。
ヴァンゲリスと言えば個人的にはどうしても『ブレードランナー (1982)』がたまらないサントラなので、もっと似たようなアルバムは無いものかと遡っていくつも手に入れていた。どれももうちょいだなあと思いながら聞いていたのだが、まさかほぼ10年も遡ったこの『動物の黙示録』が一番ぐっとくるアルバムだったとは!そういう興奮なわけだ。3曲目「憂うつな猿」(原題:Le Singe Bleu→そのまま青い猿とも訳せる)がいいタイトルであるプラス7:39のゆったーーりした哀愁サックス曲で、これは間違いなく「Blade Runners Blues」のひな型であろう。
しかしこのアルバムの玉に瑕はジャケットだ。裏ジャケットの方(これがブルーモンキー?)が断然かっこいい。
Vangelis / L'apocalypse des Animaux (1973)
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さらに追記として。某アンビエント本にも一番最初に載っているのが下記のアルバム。ドイツでも英国でもなくフランス、ジャンジャックペリー先生の1958年の作品。68年じゃなくて、58年である!恐るべし。タイトルは『眠りへの前奏曲』と眠りのための電子音であり、その後のプログレ的おどろおどろしさとは、現代音楽的気難しさとも無縁であるところも含めて、これがアンビエントの概念的にも音的にも源泉というのを否定はできない。※オリジナルはとんでもなくレアだが、2018年にLP再発あり。サブスクやBandcampでは別ジャケで存在あり。
Jean-Jacques Perrey / Prélude Au Sommeil (1958)