街はトワイライ

CD屋トマト先輩の日々

THURSDAY AFTERNOON 006

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#ThursdayAfternoon

006

 

O.S.T.(大島ミチル

ICO ~霧の中の旋律~

2002

⭐⭐

 

 今回はちょっと変わった角度から1枚。好きなプレステのゲーム『ICO』のサントラ。このアルバムはゲームのあの世界観があってのものではあり、収録時間は25分程度、音質的にも音楽単体では少し弱いところがあるが、全体的に副題通り霧がかったミステリアスなシンセサイザーメインのアンビエントアルバムになっている。

 シリーズの次作『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』にもサントラはもちろん存在するが、次からはオーケストラタイプになっていて、個人的にはあまり常用したい音楽ではない。今回の件に限らずほとんどのオーケストラものサントラは、どれも代り映えがしないし、ダイナミックレンジが広く(だから盛り上がる訳だが)落ち着かないのでほとんど所有していない。その点『ICO』のサントラはずっとどんよりしていて居心地が良い。

 最後の主題歌だけ声が入っていて、アニメ『The Snowman』の名曲「Walking in the Air」タイプのボーイソプラノが沁みる一曲。

 

※2021年に「Perfect Music Files」バージョンが配信のみでリリースされている。

『ICO』発売20周年記念! 初音源化楽曲も完全収録したサウンドトラック「ICO -Perfect Music Files-」本日配信開始! – PlayStation.Blog 日本語

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『君たちはどう生きるか』

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2023.08.07 台風が過ぎた夜にひとりで

 

昨日見てずっと頭の中‬。以下、ネタバレありのメモ

・‪‪駿は最後の最後に1秒だけのあの子なんじゃ‬!?と気づくと急に複雑なパーツがつながってく感覚。

‪・少年の寝顔が美しかった‬。

 

『米津玄師 × 菅田将暉 対談』動画を見た。そのアフレコに関する話の中で、青サギが鈴木敏夫!?的な発言が出てくる。なんと。それならそれぞれキャラが誰かのメタファーになってるのか。と驚きながら考察。これはやはり複雑な映画だ。

 

▪️青サギ:鈴木敏夫 /単純に詐欺師のサギ

▪️キリコ:高畑勲 /地獄(天国)にいる先輩、煙草

▪️インコ王:ディズニー?? /インコもペリカン外資系か?

▪️大叔父:??

 

▪️父:宮崎駿の父

▪️ヒミ:???

▪️夏子:宮崎駿の母

 

▪️マヒト:主人公(主人公は主人公)

▪️夏子の子:宮崎駿(最後のシーンに1秒)

 

 

 

稲泉連『サーカスの子』

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 まず何よりこの本は”れんれん”にしか書けないものだから、とても貴重な一冊であると思う。終わらない祭の中で暮らす人たちと、その祭の灯りが遠のく時。観客はもちろん、そこで暮らす人たちにとっても、サーカスは夢と現の堺にあるものだった。消えかかっているサーカスという文化と重なり、消えかかっている私の幼き日々までも振り返らせてくれるよい読書の時間でした。

 そもそもサーカスジャケのアルバムって他に何があるだろうと探していて偶然見つけた本。「サーカス」やっぱりなんてそそられる響き🎪

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THURSDAY AFTERNOON 005

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#ThursdayAfternoon

005

 

Erik Wøllo

SOURCES : Early Works 1986 - 1992

2019

⭐⭐⭐

 

 こちらも最近よく流している1枚。かなり多作で現在もリリースを続けているノルウェーのアーティスト、ニューエイジ本に載っていた80年代の代表的アルバムを気になって調べていたが、思いがけず近年リリースされたこの初期未発表集が一番すんなり耳によく気に入った。アンビエント界隈に限らず最近はこのような発掘音源がよくリリースされているが、なかなか侮れないものも多く、「ベストアルバム」は要らないにしても未発表ものはチェックする必要がある。

 代表作である80年代のオリジナルアルバム『Traces (1985)』『Silver Beach (1987)』に比べニューエイジ感は薄め、ビートものもあるが寄りアンビエントサウンドで逆に古さを感じ無い。80年代末頃のことを考えるに、台頭するレイブカルチャーの中であのイーノもそうだったようにこのような純(?)アンビエントミュージックは古く感じてしまう時代だったのかもしれない(だから未発表)。寄り地味と言えば地味なのかもしれないが、今気づくと地味なアルバムが好みなのか・・・。アルバムの全体の流れもとても良い。

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THURSDAY AFTERNOON 004

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#ThursdayAfternoon

004

 

Ami Shavit

Neural Oscillations And Alpha Rhythms

70s / 2018

⭐⭐⭐⭐

 

 今年見つけた中ではかなりよく聞いている、何も聴くのが無いからこれにしとこう系アルバム。イスラエル・テルアビブ、シンセサイザー発掘作品。詳しくはわからないが70年代中期頃の音源を集めたもののようだ。まずこのジャケットに魅かれたが、美術家でもある本人の手による作品らしい。

 いたってシンプルと言える長尺のシンセサイザーサウンドだが、随所にアラビックなフレーズがやってくるのがユニークであり心地が良い。全体には闇のイメージ。闇の中で光る尾をなびかせた流星がゆっくり動いていくような。

 こちらもフィジカルは500枚限定LPのみ(店に1枚だけ入荷したが欲しかった・・・)なので、今回もBandcampで購入→自作CD。紙ジャケとの相性もよく、そしてやっぱりこのアートワークがよい。モスクのような黄金の月のような、デススターのような。インスト作品にとってアートワークは音と同じくらい重要である。

 

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Nina Simone At Carnegie Hall (1963)

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「夢だったカーネギーホールの舞台。

でも本当はここで、バッハが弾きたかった。」

 

 数あるニーナ・シモンのアルバムの中でこれを選ぶ人は少ないように思う。音もあまり良くないし、決してベストなアルバムとは、特にベストなライブ盤だとは全く思わないのだが、こればかり聴いている。先に書くともしかしたらニーナのアルバムの中で最も「クラシック」な作品なのかもしれない。

 1963年5月12日のカーネギーホール公演後にリリースされたのだが、なぜこんなに地味で一風変わった選曲のライブ盤を出したのだろう。盛り上がるようなスウィンギンな曲は1曲もないし、熱いアフロもなし、2曲目にいきなりボーカルなしのインストピアノ曲、中盤急に日本のメロディ「さくらさくら」、B面も始終静かでラストのつながった2曲も1959年の初のライブ盤『At Town Hall』に2曲とも既に収録されている曲であり、ちょっと不可解な選曲になっている。実際、地味なアルバムを補うように?この後に同じ日のカーネギーホール公演から選ばれた2枚目のライブ盤『Folksy Nina (1964)』がリリースされている。

 4歳からクラシックピアノを習っていたニーナ、クラシックの聖地とされるこのニューヨークで一番有名なカーネギーホールの舞台に立つのが夢だったようだ。その腕は優秀で順調に進学していくが、カーティス音楽大学の入学に不合格となり(後にその理由が彼女が黒人だったからとわかる)、ピアニストとしての道を挫折してしまう過去がある。

 「この大舞台の、このピアノで、本当はバッハが弾きたかった。」

ニーナのその想いは大げさなものではないはず。既にシンガーとして注目されていたニーナに、カーネギーホールの観客が求めていたのは歌でありジャズ/ブルースであったのは確かであろう。そんなニーナの状況/心境を知ると、アルバム2曲目ピアノだけの「Theme from Samson and Delilah」はものすごく刺さる。あまりいい音質でない60年前の舞台から届く、優雅で美しくまた力強いピアノの一音一音が輝いている。彼女の絶たれた夢があふれ出してくるようで、静かに圧倒される。この一曲のためだけにもアルバムを手にしてほしいと思います。

 翌年1964年、奇しくも同じカーネギーホールの舞台でニーナは「Mississippi Goddam」を歌い、公民権運動の渦中へと突き進んでいくこととなる。

 

WHAT HAPPEND, MISS SIMONE?

ニーナ・シモン~歌の魂』

 

 この映画を見たいためにNetflixに入りました。ぜひみてほしい。映画を反芻するにひとつ出て来た感想としては、まだ小さかったニーナには宇宙人にみえたピアノの恩師も、そしてインタビューにずっとでてくる兄貴分のギタリストの人も、ふたりとも白人であるということ。それは白人にも良い人がいるというようなちっぽけなことでなく、もっともっとシンプルに人間の肌の色は人間の中身とほとんど関係がないということ。

 ちなみにニーナを妹みたいだと言っていて、ずっとそばに居たこのギタリスト、アル・シャックマン(Al Schackman)との出会いの場面で流れていた「For All We Know」が、私が一番好きなニーナの歌。ニーナシモンのピアノが好きだ。

 

THURSDAY AFTERNOON 003

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#ThursdayAfternoon

003

 

Raul Lovisoni / Francesco Messina

Prati bagnati del monte Analogo

1979

⭐⭐⭐

 

 もう一年近く前になるが一家コロナ陽性、家族のふたりは早々脱出した後にひとり残された真夏の午後、なぜかクーラー止めて扇風機にして、このアルバムをこれはやばいやばいとひたすら聴いてたことを思い出す。やばいのは俺だ。

 いちおジャンルをわけなければいけないなら、アンビエントになるのだろうか、、何とも言えない音楽で、Popol Vuhみたいだと最初に思ったが、ミニマル~クラシカルな印象が強い。微妙な浮遊感を保つボンヤリしたループが23分続いていく。時代もジャンルも想像できないこのジャケも印象的だが、夜景のサントラとしても心地が良い。

 お国はイタリア、未だにアーティスト名もタイトルも覚えられないが、邦題『アナロゴ山を濡らす』として国内盤も出ている。ただしその国内盤はどうやら音にエラーがあるようで、手元にあるのはBandcampからDLした自作CDだ。

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ジスモンチ『Circense』オリジナルLPのギミックジャケを再現してみた。

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ジスモンチ『Circense』オリジナルLPのギミックジャケを再現してみた。

 このピエロが天幕をめくってるジャケなんだけど、覗いてるジスモンチの写真、インサートにも全く同じ写真があって、ん??と思って最近やっと気づいた。これは本来は穴が開いてるんだ。Discogsで確認すると確かにオリジナルは「Die-Cut Sleeve」と書いてる!やっぱり。

 ということで、その穴あきジャケをカラーコピーで作ってみました。裏ジャケの3つの小窓も。これで中の写真を変えたり動かしたりして遊べるわけですね。アルバムの中身に輪をかけて素晴らしいアートワークです。

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 裏ジャケもプラケースバージョンとしてかっこよくした。ちなみにアルバムタイトルの『Circense』(シルセンシ)は「サーカス」とよく訳されてるが、どうやら「曲芸」の方が近いようだ。サーカスは『Circo』

THURSDAY AFTERNOON 002

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#ThursdayAfternoon
002

 

坂本龍一

12

2023

⭐️ ⭐️ ⭐️ ⭐️ 

 

 このアルバムについて既に何度か記したが、未だに少し特別なCDであるし、まだ考え事をしながら聴いているところがある。それは「音楽って何だろう?」というような漠然とした疑問も含んだもの。そういう漂うような時間をこのアルバムと共に静かに過ごすのは心地がよい。このアルバムに触れてから改めて、そうか坂本龍一アンビエント作品もあるんだと気づき、しかし結果的にはいくら過去作品をあたっても、『12』のような純粋なアンビエントアルバムは存在しなかった。近年のいくつか、過去にもそれらしきものはあったのだが、やっぱり全く好みではなかった。不思議である。

 三田格氏のレビューで、本人はアンビエントを作ったことが無いと断言したという話もずっと気になっているが、それは単にイーノの提唱した代名詞的な「アンビエント」に俺は乗っからないよという意味ではないだろうか。ふたりの歳もそこまで離れていないし、確かに「アンビエント」で括られてる音楽はイーノが初めて作ったわけではない。

 なぜこの『12』だけ好んで何度も聞いているのだろうか?という答えがこのアルバムの中身なんだろうが、もしかしたら最後にしてはじめて?ほぼ気負いがない、とても純粋な音楽をリリースしたのではないだろうかと考える。こちらが入り込める空間がある。ピアノも慌てるように調達したようだし、音や環境やなにより自分の身体の状況をも含めて、これが今の自分、この瞬間が音楽だ。というただそれだけの。ミスタッチと思われる音にもあざとさが無く、とても自然に聞こえる。

 最後の陶器の音は、アルバムのそれまでの音とはかなり異なっていて、そこに来るとはっと目が覚めるような感じになる。何かの合図、何かを知らせる合図なのかなといつもイメージする。そこが境界であるように思う。

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2023年上ファンキ

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 今年の上半期もそろそろ終了。よく聞いていた思いのある9枚。

去年末からの寒い時期はどっぷりランディニューマンだった。挙げた2枚のアルバムの全曲に自ら対訳をつけてみた。そのおかげでとても大事な作品となった。特に『Little Criminals』のすばらしさ。

春あたりはやっぱり坂本龍一『12』だろうか。このアルバムだけ今年出た作品。

9枚中5枚はお店で扱うことができたのでまあ少しは良かったかもしれない。やはり自分が良いと思う音楽は自分の店に並べたいものだ。毎度あまりに反応が無いので、おかしいことしてるのか?と常にためらってもしまうが、魚屋がうまい魚を仕入れて、八百屋がうまい野菜を仕入れて店に並べたい!ということと変わらないのではないだろうか?違うのか。

 

2023年01-06月

Duster / Contemporary Movement (2000)

Ami Shavit / Neural Oscillations And Alpha Rhythms (2018)

Erik Wøllo / Sources - Early Works 1986-1992 (2019)

Randy Newman / Dark Matter (2017)

Randy Newman / Little Criminals (1977)

Tiny Tim / Tiny Tim's America (2016)

Tolerance / Demos (2020)

坂本龍一 / 12 (2023)

Tim Hecker & Daniel Lopatin / Instrumental Tourist (2012)